くらし

ドラマみたいな思い出のジム一択 「新開ボクシングジム」

Boxing

今回の記事は、もうすでに入手不可能な商品。。。ではなくて、その昔川崎にあったボクシングジムでの体験談です。

今から数えたらだいぶ昔の話ですが、当時大学生だった俺は有り余る体力と暇を持て余し、本来勉学に勤しむべくその貴重な時間をアルバイト中心に費やし、残りの貴重な時間もモテたい一心からTarzanで見かけた細マッチョボディを目指し、ヨコシマな気持ち満載で近所のフィットネスジムをいくつか見学していました。

そんなある日、家から街中とは反対方面に歩いた高速入り口付近の閑散とした住宅地に一つのプレハブ小屋を見つけました。平屋のプレハブの開け放たれた窓からは、周囲に鳴り響くバカでかい音で3分毎の電子音のブザーが聞こえ、中央には四角いリングがあるのが見えました。

そう。そこはボクシングジム。「新開ボクシングジム」 という名の世界チャンピオン養成所(目標)だったのです。

1人の練習生らしきトレーニングをする若者の姿が見え、餌を見つけた野良猫よろしく遠巻きに眺めながら徐々に近づき覗いていると、中の練習生が「見学ですか?どうぞ」と声をかけてくれました。

イガグリ頭の会長との出会い

そんな状況から後戻りもできず、恐る恐るプレハブ小屋の中に上がらせてもらうと、「会長ー。見学の方ですー」と若者から声がかかり、奥の3畳ほどの小部屋(会長室)から金のネックレスにパンチパーマのド派手な。。。。イヤ。。。イガグリ頭にジャージを着込んだどうみても人の良さそうな小柄なおじさんが現れます。

体力づくりにはボクシングが一番や」「世界チャンピオン目指さんのか?」と小柄な関西弁イガグリおじさんがボクシングの魅力をひとしきりふんだんに語ると、フィットネスジムで女性トレーナーと談笑しながらプロテインを飲んでいる俺の理想の細マッチョロードは、次の日から、プレハブ小屋で汗臭いトレーニング生活をスタートさせるという現実にすり替わっていたのでした。

昼間は大学に通い、夕方からアルバイトがあったので、大学の空き時間を見つけてジムに通うようになりました。

本格的なプロ志望の練習生は仕事をしながら通っているので、夕方ぐらいからトレーニングを始める方がほとんどでしたが、このジムは朝から開いてます。そもそもモテたいだけのヨコシマな気持ちの俺は、なるべく人のいない日中に通い黙々とトレーニングをすることに決めました。

挨拶やジムの掃除、準備運動と縄跳びの飛び方を教えてもらってボクシングトレーニングがスタートしました。

俺のトレーニング

初日に拳の構え方とジャブの打ち方の基本的な説明を一通りしてもらうと、翌日から会長は3畳の会長室のテレビを前にして滅多に出てきません。そりゃそうです。ジムには体力づくりと称したヨコシマな練習生が1人だけ。会長室を覗くとテレビに写っているのはいつもTVKのボートレース中継でした。
そして通い始めて10日も経つと、会長が昼飯を食いに行っている間のジムの電話番が俺のトレーニングメニューの中に組み込まれました。

電話番以外の毎日のトレーニングメニューは、ストレッチから。

手、首、肩、腰、足とそれぞれ2ラウンドぐらいの時間をかけてゆっくりと入念に準備運動をします。

続いて、縄跳び。ロープワークとも言いますね。

こちらも2ラウンドから3ラウンド、両足とび、片足とびなどバリエーションをつけながらリズミカルに跳んでいきます。

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おまけの地獄の30秒

通常ボクシングの試合は、3分1ラウンドですが、このジムの時計は1ラウンド3分30秒にセットされています。

3分経ったところでブザーが鳴り、最後の30秒はラッシュでトレーニングの強度を上げる、地獄の30秒が追加されてます。

ロープワークは最後の30秒は二重跳びです。

ベテラン選手は3分間ずっと二重跳びしてて唖然とした記憶がありますが、俺は最初このロープワークだけで足の甲の筋を痛めた記憶があります。準備運動も兼ねスタミナをつけるトレーニングとしても有効ですね。

シャドーボクシング〜サンドバッグ

お次は、ジムの前面にある大きな鏡を前にしてのシャドーボクシングです。右手を顎の前にしっかりつけ、左手を顔の前からまっすぐ伸ばします。

戻すときもまっすぐ素早く元の位置に。何度も何度も繰り返して正しいパンチの打ち方を体に覚え込ませます。

数ヶ月通い続けると、やっと自分用の練習用ボクシンググローブを買うことができます。バンテージの巻き方を教えてもらい、グローブをはめてサンドバッグやパンチングボールを相手にした練習をします。この頃には同じジムで知り合った友達を誘って早朝から多摩川沿いを10km近くジョギングしたり、短いダッシュを何本もしたり。いつの間にかボクシングにハマってしまった感じでしたね。

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擬似スパーリング〜腹筋トレ

半年も経つと、リングの上で足捌きを加えながらのシャドーボクシングもできるようになります。

そのほか、マスボクシングと言って、寸止めのスパーリングみたいな練習があります。実際には当てずに寸止めで行う練習ですが、俺の練習時間には、年齢が5つか6つぐらい上で、階級も4階級は上、アマチュア実績バリバリの練習生に相手をさせられしていただきながら練習ができました。やっぱり相手を前にする練習は、寸止めとはいえプレッシャーを感じながらトレーニングすることができ、緊張感を味わえます。

トレーニングの最後は、腹筋のトレーニングです。斜めになったトレーニング台で腹筋を100回ぐらいやります。上級者はバスケットボールの一回り大きくて硬いボールを腹の上に落として鍛えてました。テレビでよく見るヤツです。

プロの圧・熱

たまに夕方の少し人の多い時間に行くと、プロ志望の方やプロ選手なんかがいて刺激的でしたね。練習メニューはそれぞれ別々ですが、試合前で減量が必要な選手がいたりすると、真夏に窓を閉め切ってストーブを3つも焚いて練習しているときもありました。一緒に練習する人は大変ですよね。試合前の選手はトイレの便器の水でも飲みたくなるって言ってました。。。。。

ジムには体力づくりの名目のまま2年ほど通いました。ジムで紹介してもらった二子玉の牛タン料理屋で皿洗いのバイトをして、そこで知り合った友達もいたり、練習中にヤ●ザを名乗る酔っ払いが威勢よく乗り込んでくるも、会長に1時間説教されて帰ったり、地元が一緒のプロ選手のデビュー戦を後楽園ホールに見に行ったり、相模原の名門ジムに出稽古に連れて行ってもらったり、通った時間は2年ぐらいでしたが色濃い体験ができました。

プレハブの跡地から

ジムは、残念ながら2018年でクローズしてしまったようですが、Facebookのページが残っています。

そして、新開ジムのトレーナー出身という「「弱くても勝てます」 開成高校野球部のセオリー」で有名な高橋秀実さんが書いた、「ゴングまであと30秒」はこの新開ボクシングジムを舞台にした「あしたのジョー」の対極をいくボクサーストーリーの名著です。

プレハブも取り壊され更地になった跡地をGoogleマップで目にし、だいぶ昔の思い出を掘り起こし記録に残すことにしました。
ありがとう!新開ジム!